脳の機能が明らかに低下していたのだ。
大学生になって一番驚いたことは、大学の授業がつまらなかったことだ。受験勉強も、例えば数学であれば「行列」がなにを意味しているのかとか、「虚数」の意味とか全く理解できなかったけど、「定義」をまるまる飲み込んで問題を解いていたことは、とてもつまらなかった。でも大学に上がれば、それらの「意味」を学べると信じて頑張ってお酒を飲みながら勉強して学費の安い公立大学に入学したのに。
なんてつまらない授業なんだ!
微積分の講義は、高校生の授業の延長で「講義」と言うよりも単なる授業で、頑張って新しい「定義」を丸呑みしないと前に進めない内容だった。
マヌケなボクは、大学に入ると「微積分の意味は何か?」とか、「極限を考えることの意味は何か?」とか,「虚数の意味することは何か?」みたいなことを教えてくれる講義があるものだと信じていた。
しかしそんな「講義」はなく、単に高校の延長でさらに難しい「授業」があるだけだった。それは数学だけではなく物理も化学も同じだった。
きっとボクは何となく「ゼミ」のような活動を期待していたのだと思う。学生と教授とで、「そもそも虚数が存在するのはなぜか?」みたいな議論を期待していたのだと思う。しかし工学部だったボクは、ゼミに当たる研究室に入るには、丸3年もそのつまらない「授業」に付き合わなくてはならないことが判った。
GWが過ぎたころにはすっかり参っていた。
しかし最初は「つまらないなー」と言う気持だけだったが、あるとき自分が少しおかしくなっていることに気がついた。
友達から良いバイトがあると紹介されて、高校生の模擬試験の採点を行うバイトに行ったときのことだ。実際に採点する前に3日間くらい自分で高校生の数学や物理の模擬試験を解くという、「研修期間」みたいなのがあったのだが、それらの問題がさっぱり解けなかったからだ。
問題それ自体は見慣れたもので、数ヶ月前なら苦もなく解けた問題が、なんだかどこか遠いところの言語で書かれた非常に難解な文章に見えた。
慢性うつ病である、「うつのプロ」である今から考えれば、その時すでにボクはうつの病に冒されていたのだと思う。
そう。
大学の「授業」がつまらないと感じたのも、脳機能の低下のため、本来ならもう少し面白いと感じることができる内容であったとしても、それを理解できる状態ではなかったのだと思う。
しかし、当時のボクはそんなことも知るよしもなく、授業に行かない時間はだらだらと酒を飲むことを覚えていった。

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